mittlee読書と経済雑記ブログ

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確定申告:所得税と住民税、所得控除と税額控除、寄付金控除/ふるさと納税/住宅ローン控除など

今回の内容

 確定申告の時期には、所得税還付のための手続きを行う。昨今、寄付金が必要とされている世情である。ふるさと納税や寄付金控除単体の例は各所で紹介されている。しかし、ふるさと納税公益社団等への寄付金控除、住宅ローン控除などを組み合わせたときにどのように還付されるかをご存じだろうか。本記事は、以下の読者の役に立つはずである。

 

  1. 確定申告で還付される所得税の額を計算する考え方を知りたい(今回の記事)
  2. 所得税と住民税の違い、控除について知りたい(今回の記事)
  3. 国境なき医師団ユニセフ等への寄付を考えている
  4. ふるさと納税や住宅ローン控除と組み合わせた例を知りたい

 

 本記事と次回記事では、慈善団体等への寄付をしたときに、どの程度の還付が得られるのかの想定を一般論として考える。

 ご自身の個別の所得税課税額や還付額については、税理士や税務署に直接相談してほしい。なお、各種制度は2022年3月時点のものである。

 

www.nta.go.jp

 

 本記事と次回記事では、寄付をした年の控除について、還付金について検討する。

 結論としては、下記となる。

  •  所得控除(寄付金控除)と税額控除(寄付金特別控除)の有利不利は所得に応じて決まる。
  •  たいていの場合は税額控除が有利(課税所得900万円/1800万円の壁)。
  •  寄付金特別税額控除は所得税課税額の25%まで。
  •  所得控除の対象は、年間所得の40%までの寄付金。
  •  住宅ローン控除などの税額控除が大きいと、寄付金特別控除での税額控除は活用できない。
  •  上記を超えて各種団体に寄付する部分は、すべて自己の負担となる。

 

今回の記事では、所得税と住民税について説明する。所得控除と税額控除、個別の控除を紹介する。

 

 

 

目次

 

トピック:所得税と住民税

 給与や事業の所得に応じて徴収される直接税には、所得税個人住民税道府県民税、市町村民税)が存在する。社会保険料は給与や事業等により得られる収入に対して計算、徴収される。一方で所得税と住民税は社会保険料等を控除後に課税額を計算する。

www.nta.go.jp

 

所得税

 個人の所得(収入から経費などを引いたもの)に対してかかる国税である。

 下記のような徴収方法と代表例がある。

  • 総合課税:給与所得や事業所得など。所得が増えれば税率が増す(累進課税
  • 分離課税:利子所得や譲渡所得。税率一定(比例課税)(上場株式で所得税15.315%,住民税5%)

 

令和3年分所得税税額表

課税される金額 税率 控除額
1,000から 1,949,000まで   5% 0
1,950,000から 3,299,000まで   10% 97,500
3,300,000から 6,949,000まで   20% 427,500
6,950,000から 8,999,000まで   23% 636,000
9,000,000から 17,999,000まで   33% 1,536,000
18,000,000から 39,999,000まで   40% 2,796,000
40,000,000円以上     45% 4,796,000

(出典:国税庁「税の学習コーナー」)*1

 

 細かく知りたい方には、財務省のページをご参照頂きたい。

www.mof.go.jp

 

住民税

 住んでいる都道府県、市区町村に納める地方税である。均等割と所得割から構成される。

  • 均等割:非課税限度額を上回る場合に課税。
    市町村民税3500円、道府県民税1500円。
  • 所得割:所得金額に応じて課税。
    一律10%(市町村民税6%,道府県民税4%が基本)。

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財務省:個人住民税(均等割、所得割)の概要

 

www.mof.go.jp

 

トピック:所得控除と税額控除

 所得税の課税額は、下記の式で決まる。

  • 課税額 = {(収入ー所得控除)× 税率 - 控除額} - 税額控除

 

 下記では、所得控除と税額控除について説明する。

 

所得控除

 所得税の課税額は、収入そのものに対してではなく、各種控除後の課税ベースに対して税率を掛けて計算する。課税ベースを減らしてくれるのが、所得控除である。

 以下、年収500万円のサラリーマンの例である。

 年収500万円の給与所得者の場合、年間の社会保険料の推定額は71万円とされる。

 ここで、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、課税ベース、税額を計算する。

 ここでは、上記3点の合計額、263万円が所得控除額となる。

 所得税課税額は、 (500万円-263万円) × 10% - 97,500円 = 13万9,500円 となる。

 

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財務省:給与所得者の所得税額計算のフローチャート

www.mof.go.jp

 

 数値は下記を参考とした。

www.pressance.co.jp

 

 所得控除で利用が多いものは、地震保険料控除、医療費控除、生命保険料控除、社会保険料控除(年金追納など)、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoも含む)などだろう。既婚の方は配偶者控除を利用可能かもしれない。

 

 所得控除の詳細は、財務省が一覧化している。

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財務省:人的控除の概要(所得税):基礎的な人的控除

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財務省:人的控除の概要(所得税):特別な人的控除

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財務省:その他の所得控除制度の概要(所得税):雑損控除等

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320210906p:plain

財務省:その他の所得控除制度の概要(所得税):生命保険料控除等

 

www.mof.go.jp

 

 

 住民税の所得控除については、下記の東京都主税局のページが詳しい。

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東京都:個人住民税の所得控除

 

 下記の東京都のページには、給与所得控除の説明もある。

www.tax.metro.tokyo.lg.jp

 

 今度は住民税を試算してみよう。

 先の年収500万円の給与所得者の場合、年間の社会保険料の推定額は71万円。

 ここで、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、課税ベース、税額を計算する。

 ここでは、上記3点の合計額、258万円が所得控除額となる。

 所得税課税額は、 (500万円-258万円) × 10% + 3500円 + 1500円 = 24万7,000円(内所得割額は24万2,000円) となる。

 

税額控除

 所得税の納付税額は、上記で課税ベースから算出した課税額よりも小さくなることがある。課税額を減らしてくれる仕組みが税額控除である。

 

 先ほどのサラリーマンに、2年前(2020年、令和2年)に借り入れた住宅ローンの残債が令和3年12月31日時点で1000万円あったとする。この場合は住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)により所得税額がさらに軽減される。

  • 住宅ローン控除:1000万円×1%=10万円

 先の例の所得税課税額は、 13万9,500円 - 10万円 = 3万9500円となる。

 

 国税の税額控除の代表的なものは下記。

  • 配当控除
  • 国税額控除
  • 認定NPO法人等寄付金特別控除
  • 住宅借入金等特別控除 

 

 税額控除は、下記の国税庁ページにて詳細が紹介されている。

www.nta.go.jp

 

 住民税の税額控除の代表的なものは下記。

  • 配当控除
  • 国税額控除
  • 寄付金税額控除
  • 調整控除
  • 住宅借入金等特別税額控除 

 

 住民税の税額控除は、下記の東京都主税局ページが詳しい。

 実際に適用される控除については読者諸兄がそれぞれお住まいの自治体に確認をしてほしい。

www.tax.metro.tokyo.lg.jp

 

まとめ

 本記事では、所得税と住民税の違い、税額の計算方法についてまとめた。

  • 所得税累進課税、住民税は比例課税(一定所得以上)
  • 所得控除、税額控除が所得税と住民税のそれぞれで利用できる
  • 所得控除は税金算出のための課税ベースを下げる効果
  • 税額控除は徴収額を下げる効果
  • 所得税と住民税で、控除の考え方や計算式が異なる
  • 年収500万円の独身サラリーマンが控除を使わない場合、手取りは390万円(社会保険料71万円、所得税13万9500円、住民税24万7000円)。

 

 2021年分の確定申告期間はシステムトラブルのあおりを受けた延長戦に突入しているが、既に確定申告完了済みの方が多いと思う。しかし、2022年分の確定申告でも考え方は大きくは変わらないはずだ。

 実際の税金についての相談は、読者の皆様から税理士や税務署にお問い合わせ願いたい。

 次回記事では、寄付金控除、ふるさと納税、住宅ローン控除を紹介し、組み合わせたシミュレーション例を紹介する予定である。

 

*1:国税庁,「[税のしくみ] 税の種類と分類」,https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page02.htm,(参照2022-03-20)