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確定申告:NPO(ユニセフなど)への寄付、寄附金控除/ふるさと納税/住宅ローン控除など、シミュレーション

今回の内容

 確定申告の時期には、所得税還付のための手続きを行う。昨今、寄付金を募る世情であり寄付金控除の仕方は見かける。しかし、ふるさと納税公益社団等への寄付金控除、住宅ローン控除などを組み合わせたときにどのように還付されるかをご存じだろうか。本記事は、以下の読者の役に立つはずである。

 

  1. 確定申告で還付される所得税や住民税の金額を計算する考え方を知りたい
  2. 国境なき医師団ユニセフ等への寄付を考えている
  3. ふるさと納税や住宅ローン控除と組み合わせた例を知りたい

 

 本記事は、慈善団体等への寄付をしたときに、どの程度の還付が得られるのかの想定を一般論として考える。

 繰り返しになるが、ご自身の個別の所得税課税額や還付額については、税理士や税務署に直接相談してほしい。なお、内容は2022年5月時点のものである。

 

 前回の記事はこちら。所得税と住民税の違い、所得控除と税額控除の違いについて解説した。

 

www.nta.go.jp

 

 

 前回も記述しているが、結論は下記となる。

  •  所得控除(寄付金控除)と税額控除(寄付金特別控除)の有利不利は所得に応じて決まる。
  •  たいていの場合は税額控除が有利(課税所得900万円/1800万円の壁)。
  •  税額控除は所得税課税額の25%まで。
  •  所得控除の対象は、年間所得の40%までの寄付金。
  •  住宅ローン控除などの税額控除が大きいと、寄付金特別控除での税額控除はあまり活かせない。
  •  上記を超えて各種団体に寄付する場合は、自己の負担となる。

 

 本記事では、寄付金控除/寄付金特別控除、ふるさと納税、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について紹介し、これらを組み合わせた場合の課税額と還付金についてシミュレーションを行う。

 

 

 

目次

 

 

トピック:寄附金、ふるさと納税、住宅ローンと控除

寄附金控除

 指定されたNPO政治団体等に寄付をしたとき、控除を利用できる。寄付金控除、寄付金特別控除から有利な方を選択しよう。

所得税控除部分:寄附金控除(所得控除)

 寄付をしたときに利用できる所得控除が寄付金控除である。

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財務省:その他の所得控除制度の概要(所得税):寄付金控除

 算出式は、下記の2パターンのいずれか低い方となる。

  1. 特定寄付金の合計額 - 2000円
  2. 年間所得金額 × 40% - 2000円

 

 寄付金控除以外のすべての所得控除実施後の年間所得額が100万円のA,Bの2名を例としよう。Aは50万円の寄付を、Bは2万円の寄付をしたとする。

 

 Aは認定特定非営利法人に50万円を寄付したとする。下記の計算から、Aの寄付金控除額(所得控除)は39万8000円となる。10万2000円分については所得控除を受けられない

  1.  50万円 - 2000円 = 49万8000円
  2.  (100万円 × 40%) - 2000円 = 39万8000円

 よって、所得額は 100万円 - 39万8000円 = 60万2000円となる。

 寄付金控除により、39万8000円 * 5% = 1万9900円の税金が還付される(実質寄付額48万100円)。

 

 Bは認定特定非営利法人に2万円を寄付したとする。下記の計算から、この寄付金控除額(所得控除)は1万8000円となる。2000円分については所得控除を受けられない

  1.  2万円 - 2000円 = 1万8000円
  2.  (100万円 × 40%) - 2000円 = 39万8000円

 よって、所得額は 100万円 - 1万8000円 = 98万2000円となる。

 寄付金控除により、1万8000円 * 5% = 900円の税金が還付される(実質寄付額1万9100円)。

 

 

www.nta.go.jp

 

所得税控除部分:寄附金特別控除(税額控除)

 寄付をしたときに利用できる税額控除が、寄付金特別控除である。

 下記の3パターンに分類される。

  1. 政党等寄附金特別控除
    (政党等に対する寄付金の合計額 - 2000円) × 30%
  2. 認定NPO法人等寄附金特別控除
    (認定NPO法人等に対する寄付金の合計額 - 2000円) × 40%
  3. 公益社団法人等寄附金特別控除
    (公益社団法人等に対する寄付金の合計額 - 2000円) × 40%

 

 下記のような細かいルールがある。

  • 1は所得税の25%相当額が限度
  • 2と3の合計額は所得税の25%相当額が限度
  • 100円未満の端数切捨て
  • 2000円の減額は、寄付金控除と寄付金特別控除を合わせた金額

 

 寄付金特別控除以外のすべての所得控除実施後の年間所得額が100万円のA,Bの2名を例としよう。Aは50万円の寄付を、Bは2万円の寄付をしたとする。

 

 Aは認定特定非営利法人に50万円を寄付したとする。下記の計算から、この人の寄付金特別控除額(税額控除)は1万2500円となる。Aについては所得控除(1万9900円)が有利である。

  1.  (50万円 - 2000円) × 40% = 19万9200円
  2.  (100万円 × 5%) × 25% = 1万2500円

 

 Bは認定特定非営利法人に2万円を寄付したとする。下記の計算から、この人の寄付金特別控除額(税額控除)は7200円となる。Bについては税額控除(7200円)が有利である。

  1.  (2万円 - 2000円) × 40% =  7200円
  2.  (100万円 × 5%) × 25% = 1万2500円

 

 寄付金控除に比べて、寄付金特別控除の対象となる特定寄付金の種類は少ない。寄付を実施する前に一度確認されることを推奨する。

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freee:寄附金控除と寄付金特別控除で選べるもの一覧

 

advisors-freee.jp

 

住民税控除部分:寄附金特別控除

 一部の特定寄付金について、住民税からも税額控除が可能である。しかし、こちらは国税よりも複雑である。課税地の自治体の指定の有無により、控除額が異なるのである。また、住民税の控除についての計算対象となる寄付金額は、所得の30%までである。

  1. 都道府県のみが対象に指定している場合
    通常: (寄付金の合計額 ) × 4%
    指定都市: (寄付金の合計額 ) × 2%
  2. 市区町村のみが対象に指定している場合
    通常: (寄付金の合計額 ) × 6%
    指定都市: (寄付金の合計額 ) × 8%

  3. 都道府県と市区町村の両者が対象に指定している場合
    (寄付金の合計額 ) × 10%

 

www.soumu.go.jp

 

 

 仮定の例について考える。

 住民税の課税所得額が50万円のAとBがいるとする。先ほどの寄付先団体は、都道府県のみが特定寄付金の対象として指定しているとする。

 Aは認定特定非営利法人に50万円を寄付したとする。

 下記の計算から、この人の住民税控除額(税額控除)は6000円となる。

  1.  所得の30% = (50万円) × 30% = 15万円
  2.  寄付金額 = 50万円

  上記少ない方の15万円を基準とする。

   15万円 × 4% = 6000円

 

 Bは認定特定非営利法人に2万円を寄付したとする。下記の計算から、この人の住民税控除額(税額控除)は800円となる。 

  1. 所得の30% = (50万円) × 30% = 15万円
  2.  寄付金額 = 2万円

  上記少ない方の2万円を基準とする。

   2万円 × 4% = 800円

 

ふるさと納税

 寄付金控除の中で特に知名度が高いのが、ふるさと納税である。

 ふるさと納税を利用する場合、自己負担金と所得控除分を除いて、一定の範囲内で住民税が減額される。実質課税額が自己負担金の2000円となる。

 

www.soumu.go.jp

 

所得税控除部分:ふるさと納税

 ふるさと納税利用時に所得税が控除されるのは、確定申告を利用するときである。

 地方公共団体への寄付金は特定寄付金に該当する。先の図でも記載されているが、こちらについては寄付金控除(所得控除)が認められる。

 

 算出式は、前述のとおり下記の2パターンのいずれか低い方となる。

  1. 特定寄付金の合計額 - 2000円
  2. 年間所得金額 × 40% - 2000円

 

 所得税控除額 = (ふるさと納税額-2,000円) × 所得税率となる。

 

www.nta.go.jp

 

住民税控除部分:ふるさと納税

 ふるさと納税の特徴として代表的なのが、住民税からの控除である。

 住民税からの控除(特例分)が存在するため、こちらが住民税所得割額の20%以内に収まる限りは、自己負担額は2000円となる。

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総務省ふるさと納税のしくみ「控除額の計算」

 

下記1+(2または3の少ない方)の合計が、住民税からの控除額である。

  1. 住民税からの基本控除額
    (ふるさと納税の合計額 - 2000円 ) × 10%
  2. 住民税からの特例控除額(住民税所得割額の2割を超えない場合)
    (ふるさと納税の合計額 - 2000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)
  3. 住民税からの特例控除額(住民税所得割額の2割を超えた場合)
    (住民税所得割額)× 20%

 

 仮定の例について考える。

 所得税の課税所得額が100万円住民税の課税所得額が105万円のAとBがいるとする。ある自治体にふるさと納税を行ったとする。(調整控除は考慮しない。)

 

 Aは50万円をふるさと納税したとする。この場合の自己負担額は42万7800円(50万円 - 1万9900円 - 5万2300円)と非常に高額

 Aの所得税還付額(所得控除・国税)は既出のとおり1万9900円。

 Aの住民税控除額(税額控除)5万2300円(3万1300円+2万1000円)となる。

 1-1. 所得の30% = (105万円) × 30% = 31万5000円

 1-2. 寄付金額 = 50万円

  上記少ない方の31万5000円を基準とする。

   (31万5000円 - 2000円) × 10% = 3万1300円

 2. (50万円 - 2000円)×(100% - 10%(基本分) -  5%)= 42万3300円

 3. (105万円 × 10%) × 20% = 2万1000円

 

 Bは2万円をふるさと納税したとする。この場合の自己負担額は2000円である。(2万円 - 900円 - 1万7100円)

 Bの所得税還付額(所得控除・国税)は既出のとおり900円。

 Bの住民税控除額(税額控除)1万7100円(1800円+1万5300円)となる。

 1-1. 所得の30% = (105万円) × 30% = 31万5000円

 1-2. 寄付金額 = 2万円

  上記少ない方の2万円を基準とする。

   (2万円 - 2000円)× 10% = 1800円

 2. (2万円 - 2000円)×(100% - 10%(基本分) -  5%)= 1万5300円

 3. (105万円 × 10%) × 20% = 2万1000円

 

ワンストップ特例制度と確定申告:どちらが得か

下記のページに特例制度の利用と確定申告の比較がある。

furu-sato.com

 

まとめると以下のとおり。

 ・控除の範囲内ならば大差はない。

 ・住宅ローン控除の枠を使いきれない場合は、ワンストップ特例が有利な場合がある(所得控除(寄付金控除)を利用しない)。

 ・住民税特例枠を使い切ってしまう場合は、確定申告が有利(所得控除(寄付金控除)を利用する)。

 

ふるさと納税の注意点

 先ほどのAの例で見たように、特例制度を利用できる限界額は住民税所得割額の2割までである。それを超えた場合は自己負担額が増加する。

 また、住民税が別の控除により軽減されている場合は、所得税と住民税の控除を受けられない場合がある(住宅ローン、外国税額控除など)。

 

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

所得税控除部分:住宅ローン控除(税額控除)

 購入後一定の期間、特定の金額まで住宅ローン控除として税額控除を受けることができる。

 0.7%未満の金利で借り入れている場合、借入額が控除対象額未満の場合は返済期間を長めにとることに優位性がある。優遇対象は家の種類や入居年(2023年以前、24-25年、26年以降)で異なる。

 ご自身の最適なローンの組み方については確認、計算してみてほしい。

finance.recruit.co.jp

 

過去の住宅ローン減税の減税額一覧

 住宅ローン控除での税額控除額は、購入年や入居年で異なる。概要を記載する。

住宅借入金等特別控除の過去減税額一覧

 

mponline.sbi-moneyplaza.co.jp

 

www.ht-tax.or.jp

 

 下記の辻・本郷税理士事務所の資料に令和4年度以降の控除額について詳しくまとまっている。建物の仕様と入居年によって控除上限額や期間が変化する。

辻・本郷税理士法人資料:「速報・令和4年度税制改正大綱」住宅ローン控除

(出典:辻・本郷税理士事務所「速報・令和4年度税制改正大綱」)*1

 

住民税控除部分:住宅ローン控除

 住宅ローン控除では所得税で控除しきれなかった部分を、住民税から控除することができる。2014年4月-2021年12月入居分については課税総所得金額等の7%(最高13.65万円)を控除できる。2013年-2014年3月入居分と2022年以降入居分については課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)のみを控除できる。

 

辻・本郷税理士法人資料:「速報・令和4年度税制改正大綱」住宅ローン控除(住民税)

(出典:辻・本郷税理士事務所「速報・令和4年度税制改正大綱」)*2

 

 新制度の住宅ローン控除については、下記の三菱UFJ銀行のページにも詳しくまとまっている。

www.bk.mufg.jp

 

トピック:所得控除と税額控除(復習)

 所得税の課税額は、下記の式で決まる。

  • 課税額 = {(収入ー所得控除)× 税率 - 控除額} - 税額控除

 

 下記では、改めて所得控除と税額控除について説明する。

 

所得控除と税額控除

 所得税の課税額は、収入そのものに対してではなく、各種控除後の課税ベースに対して税率を掛けて計算する。課税ベースを減らしてくれるのが、所得控除である。

 以下、年収500万円のサラリーマンの例である。

 年収500万円の給与所得者の場合、年間の社会保険料の推定額は71万円とされる。

 ここで、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、課税ベース、税額を計算する。

 ここでは、上記3点の合計額、263万円が所得控除額となる。

 課税額は、 (500万円-263万円) × 10% - 97,500円 = 13万9,500円 となる。

 税額控除があれば、ここからさらに課税額が減る。

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320203557p:plain

財務省:給与所得者の所得税額計算のフローチャート

www.mof.go.jp

 

 詳細は前回の記事を参照のこと。

mittlee.hatenablog.com

 

 

トピック:各種控除の組み合わせ、シミュレーション

 ここまでの制度の説明を踏まえて、還付についてのシミュレーションを行う。

 シミュレーションについては、下記の条件を示して2例実施する。

 ・年収=500万円

 ・所得

 ・寄付金額

 ・ふるさと納税

 ・年末住宅ローン借入額

 

寄附金特別控除+ふるさと納税+住宅ローン控除(所得税範囲内)

所得税の計算

所得税を計算する。計算の結果は、1万9700円が課税額。

 

ここではふるさと納税以外の寄付金については寄付金特別控除を利用する。

所得控除:

 ・寄付金控除額(ふるさと納税分)=(6万円-2000円) = 5万8000円

 

ここで課税所得を計算する。

 課税所得 = 500万円 - (144万円 + 71万円 + 48万円 +5万8000円) = 231.2万円

 所得税額(税額控除前) = 231.2万円 × 10% -9万7500円 = 13万3700円

 

ここから税額控除を適用する。

 住宅ローン控除 = 1100万円 × 1% = 11万円

 所得税額(住宅ローン控除適用後) = 13万3700円 -11万円 = 2万3700円

 

寄付金特別控除について計算する。

 1万円 × 40% = 4000円(自己負担分2000円はふるさと納税で計算済み)

 2万3700円 × 25% = 5925円 -> 5900円(100円未満切り捨て)

 

よって、寄付金特別控除の利用(4000円)が可能。

 

 所得税額(寄付金特別控除適用後) = 2万3700円 - 4000円 = 1万9700円

 

住民税の計算

続いて、住民税を計算する。計算の結果は、19万1900円が課税額。

 

所得割額を計算する。

 課税所得 = 500万円 - (144万円 + 71万円 + 43万円 ) = 242万円

 所得割 = 242万円 × 10% = 24万2000円

 

ここで調整控除が2500円あるとする。

 住民税額(所得割額:税額控除前) = 24万2000円 -2500円 = 23万9500円

 

ふるさと納税について、税額控除を計算する。

住民税控除額(ふるさと納税の税額控除)5万2200円(5800円+4万6400円)

 1-1. 所得の30% = (242万円) × 30% = 72万6000円

 1-2. 寄付金額 = 6万円

  上記少ない方6万円を基準とする。

   (6万円 - 2000円)× 10% = 5800円

 2. (6万円 - 2000円)×(100% - 10%(基本分) -  10%)= 4万6400円

 3. (242万円 × 10%) × 20% = 4万8400円

 

 認定特定非営利法人に1万円を寄付している。ユニセフ都道府県のみ特定NPO認定、市区町村では認定なしとする。下記の計算から、ふるさと納税以外の住民税控除額(税額控除)400円となる。 

  1. 所得の30% = 72万6000円
  2.  寄付金額 = 1万円

  上記少ない方の1万円を基準とする。

   1万円 × 4% = 400円

 

以上より、

住民税額(所得割額:税額控除後) = 23万9500円 - 5万2200円 - 400円 =18万6900円

また、住民税(均等割額:復興特別税1000円含む)=5000円 

 

よって、住民税総額は19万1900円

 

寄附金控除+ふるさと納税+住宅ローン控除(所得税範囲超過)

所得税の計算

所得税を計算する。計算の結果は、0円が課税額。

 

ここではふるさと納税以外の寄付金については寄付金控除を利用する。

所得控除:

 ・寄付金控除額(ふるさと納税分+ユニセフ)=(6万円 + 1万円 -2000円) = 6万8000円

 

ここで課税所得を計算する。

 課税所得 = 500万円 - (144万円 + 71万円 + 48万円 +6万8000円) = 230.2万円

 所得税額(税額控除前) = 230.2万円 × 10% -9万7500円 = 13万2700円

 

ここから税額控除を適用する。

 住宅ローン控除 = 2400万円 × 1% = 24万円

 所得税額(住宅ローン控除適用後) = 13万3700円 -24万円 = -10万6300円

 -> 所得税額(住宅ローン控除適用後) = 0円,

   住民税からの控除可能額=10万6300円 < 13万6500円

 

 

寄付金特別控除について計算する。

 1万円 × 40% = 4000円(自己負担分2000円はふるさと納税で計算済み)

 0円 × 25% = 0円

よって、寄付金特別控除の利用不可。(3200円の税負担増

 

 所得税 = 0円 - 0円 = 0円

 

住民税の計算

続いて、住民税を計算する。計算の結果は、8万5600円が課税額。

 

所得割額を計算する。

 課税所得 = 500万円 - (144万円 + 71万円 + 43万円 ) = 242万円

 所得割 = 242万円 × 10% = 24万2000円

 

ここで調整控除が2500円あるとする。

 住民税額(所得割額:税額控除前) = 24万2000円 -2500円 = 23万9500円

 

ふるさと納税について、税額控除を計算する。

住民税控除額(ふるさと納税の税額控除)5万2200円(5800円+4万6400円)

 1-1. 所得の30% = (242万円) × 30% = 72万6000円

 1-2. 寄付金額 = 6万円

  上記少ない方6万円を基準とする。

   (6万円 - 2000円)× 10% = 5800円

 2. (6万円 - 2000円)×(100% - 10%(基本分) -  10%)= 4万6400円

 3. (242万円 × 10%) × 20% = 4万8400円

 

 認定特定非営利法人に1万円を寄付している。ユニセフ都道府県のみ特定NPO認定、市区町村では認定なしとする。下記の計算から、ふるさと納税以外の住民税控除額(税額控除)400円となる。 

  1. 所得の30% = 72万6000円
  2.  寄付金額 = 1万円

  上記少ない方の1万円を基準とする。

   1万円 × 4% = 400円

 

以上より、

住民税額(所得割額:税額控除後) = 23万9500円 - 10万6300円 - 5万2200円 - 400円 = 8万600円

また、住民税(均等割額:復興特別税1000円含む)=5000円 

 

よって、住民税総額は8万5600円

 

まとめ

本記事では、寄付金控除と寄付金特別控除の違い、ふるさと納税制度、住宅ローン控除の概要、税額の計算方法についてまとめた。

  • 寄付金控除は所得控除、寄付金特別控除は税額控除
  • 寄付金特別控除の方が一般的には寄付金控除より有利
  • ふるさと納税の還付金額は他の寄付金に比較して大きく有利
  • 住宅ローン控除額が大きいと、寄付金特別控除やふるさと納税を利用できない部分が発生する。
  • 寄付金特別控除を利用できない場合は、寄付金控除で処理する。
  • 年収500万円の独身サラリーマンが控除を使わない場合、手取りは390万円(社会保険料71万円、所得税13万9500円、住民税24万4500円)。
  • 年収500万円の独身サラリーマンがふるさと納税6万円、ユニセフへの寄付1万円、2400万円の控除対象住宅ローンがある場合、手取りは413万円(社会保険料71万円、所得税0円、住民税8万6100円。寄付金7万円。)。ふるさと納税分の返礼品あり(1万8000円相当)。

 

 こどもの日にはあまり相応しくないテーマの記事である。

 控除を増やせば増やすほど、計算はややこしくなっていく。ふるさと納税以外の寄付金控除を使っている読者は少ないかもしれないが、本記事でどのような課税がされるのかをお分かりいただけたのではないだろうか。昨今の感染症や政情不安により、寄付が求められている。2022年分の確定申告では、ふるさと納税以外の寄付金控除や寄付金特別控除を申請されてはどうだろう。

 実際の税金についての相談は、読者の皆様から税理士や税務署にお問い合わせ願いたい。

 

*1:辻・本郷税理士事務所,「速報・令和4年度税制改正大綱」P32,https://www.ht-tax.or.jp/pdf/article/zeiseikaisei2022.pdf,(参照2022-05-05)

*2:辻・本郷税理士事務所,「速報・令和4年度税制改正大綱」P33,https://www.ht-tax.or.jp/pdf/article/zeiseikaisei2022.pdf,(参照2022-05-05)

確定申告:所得税と住民税、所得控除と税額控除、寄付金控除/ふるさと納税/住宅ローン控除など

今回の内容

 確定申告の時期には、所得税還付のための手続きを行う。昨今、寄付金が必要とされている世情である。ふるさと納税や寄付金控除単体の例は各所で紹介されている。しかし、ふるさと納税公益社団等への寄付金控除、住宅ローン控除などを組み合わせたときにどのように還付されるかをご存じだろうか。本記事は、以下の読者の役に立つはずである。

 

  1. 確定申告で還付される所得税の額を計算する考え方を知りたい(今回の記事)
  2. 所得税と住民税の違い、控除について知りたい(今回の記事)
  3. 国境なき医師団ユニセフ等への寄付を考えている
  4. ふるさと納税や住宅ローン控除と組み合わせた例を知りたい

 

 本記事と次回記事では、慈善団体等への寄付をしたときに、どの程度の還付が得られるのかの想定を一般論として考える。

 ご自身の個別の所得税課税額や還付額については、税理士や税務署に直接相談してほしい。なお、各種制度は2022年3月時点のものである。

 

www.nta.go.jp

 

 本記事と次回記事では、寄付をした年の控除について、還付金について検討する。

 結論としては、下記となる。

  •  所得控除(寄付金控除)と税額控除(寄付金特別控除)の有利不利は所得に応じて決まる。
  •  たいていの場合は税額控除が有利(課税所得900万円/1800万円の壁)。
  •  寄付金特別税額控除は所得税課税額の25%まで。
  •  所得控除の対象は、年間所得の40%までの寄付金。
  •  住宅ローン控除などの税額控除が大きいと、寄付金特別控除での税額控除は活用できない。
  •  上記を超えて各種団体に寄付する部分は、すべて自己の負担となる。

 

今回の記事では、所得税と住民税について説明する。所得控除と税額控除、個別の控除を紹介する。

 

 

 

目次

 

トピック:所得税と住民税

 給与や事業の所得に応じて徴収される直接税には、所得税個人住民税道府県民税、市町村民税)が存在する。社会保険料は給与や事業等により得られる収入に対して計算、徴収される。一方で所得税と住民税は社会保険料等を控除後に課税額を計算する。

www.nta.go.jp

 

所得税

 個人の所得(収入から経費などを引いたもの)に対してかかる国税である。

 下記のような徴収方法と代表例がある。

  • 総合課税:給与所得や事業所得など。所得が増えれば税率が増す(累進課税
  • 分離課税:利子所得や譲渡所得。税率一定(比例課税)(上場株式で所得税15.315%,住民税5%)

 

令和3年分所得税税額表

課税される金額 税率 控除額
1,000から 1,949,000まで   5% 0
1,950,000から 3,299,000まで   10% 97,500
3,300,000から 6,949,000まで   20% 427,500
6,950,000から 8,999,000まで   23% 636,000
9,000,000から 17,999,000まで   33% 1,536,000
18,000,000から 39,999,000まで   40% 2,796,000
40,000,000円以上     45% 4,796,000

(出典:国税庁「税の学習コーナー」)*1

 

 細かく知りたい方には、財務省のページをご参照頂きたい。

www.mof.go.jp

 

住民税

 住んでいる都道府県、市区町村に納める地方税である。均等割と所得割から構成される。

  • 均等割:非課税限度額を上回る場合に課税。
    市町村民税3500円、道府県民税1500円。
  • 所得割:所得金額に応じて課税。
    一律10%(市町村民税6%,道府県民税4%が基本)。

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320201716p:plain

財務省:個人住民税(均等割、所得割)の概要

 

www.mof.go.jp

 

トピック:所得控除と税額控除

 所得税の課税額は、下記の式で決まる。

  • 課税額 = {(収入ー所得控除)× 税率 - 控除額} - 税額控除

 

 下記では、所得控除と税額控除について説明する。

 

所得控除

 所得税の課税額は、収入そのものに対してではなく、各種控除後の課税ベースに対して税率を掛けて計算する。課税ベースを減らしてくれるのが、所得控除である。

 以下、年収500万円のサラリーマンの例である。

 年収500万円の給与所得者の場合、年間の社会保険料の推定額は71万円とされる。

 ここで、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、課税ベース、税額を計算する。

 ここでは、上記3点の合計額、263万円が所得控除額となる。

 所得税課税額は、 (500万円-263万円) × 10% - 97,500円 = 13万9,500円 となる。

 

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320203557p:plain

財務省:給与所得者の所得税額計算のフローチャート

www.mof.go.jp

 

 数値は下記を参考とした。

www.pressance.co.jp

 

 所得控除で利用が多いものは、地震保険料控除、医療費控除、生命保険料控除、社会保険料控除(年金追納など)、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoも含む)などだろう。既婚の方は配偶者控除を利用可能かもしれない。

 

 所得控除の詳細は、財務省が一覧化している。

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財務省:人的控除の概要(所得税):基礎的な人的控除

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320210816p:plain

財務省:人的控除の概要(所得税):特別な人的控除

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財務省:その他の所得控除制度の概要(所得税):雑損控除等

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320210906p:plain

財務省:その他の所得控除制度の概要(所得税):生命保険料控除等

 

www.mof.go.jp

 

 

 住民税の所得控除については、下記の東京都主税局のページが詳しい。

f:id:mittlee_6791CRAdde:20220320214239p:plain

東京都:個人住民税の所得控除

 

 下記の東京都のページには、給与所得控除の説明もある。

www.tax.metro.tokyo.lg.jp

 

 今度は住民税を試算してみよう。

 先の年収500万円の給与所得者の場合、年間の社会保険料の推定額は71万円。

 ここで、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、課税ベース、税額を計算する。

 ここでは、上記3点の合計額、258万円が所得控除額となる。

 所得税課税額は、 (500万円-258万円) × 10% + 3500円 + 1500円 = 24万7,000円(内所得割額は24万2,000円) となる。

 

税額控除

 所得税の納付税額は、上記で課税ベースから算出した課税額よりも小さくなることがある。課税額を減らしてくれる仕組みが税額控除である。

 

 先ほどのサラリーマンに、2年前(2020年、令和2年)に借り入れた住宅ローンの残債が令和3年12月31日時点で1000万円あったとする。この場合は住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)により所得税額がさらに軽減される。

  • 住宅ローン控除:1000万円×1%=10万円

 先の例の所得税課税額は、 13万9,500円 - 10万円 = 3万9500円となる。

 

 国税の税額控除の代表的なものは下記。

  • 配当控除
  • 国税額控除
  • 認定NPO法人等寄付金特別控除
  • 住宅借入金等特別控除 

 

 税額控除は、下記の国税庁ページにて詳細が紹介されている。

www.nta.go.jp

 

 住民税の税額控除の代表的なものは下記。

  • 配当控除
  • 国税額控除
  • 寄付金税額控除
  • 調整控除
  • 住宅借入金等特別税額控除 

 

 住民税の税額控除は、下記の東京都主税局ページが詳しい。

 実際に適用される控除については読者諸兄がそれぞれお住まいの自治体に確認をしてほしい。

www.tax.metro.tokyo.lg.jp

 

まとめ

 本記事では、所得税と住民税の違い、税額の計算方法についてまとめた。

  • 所得税累進課税、住民税は比例課税(一定所得以上)
  • 所得控除、税額控除が所得税と住民税のそれぞれで利用できる
  • 所得控除は税金算出のための課税ベースを下げる効果
  • 税額控除は徴収額を下げる効果
  • 所得税と住民税で、控除の考え方や計算式が異なる
  • 年収500万円の独身サラリーマンが控除を使わない場合、手取りは390万円(社会保険料71万円、所得税13万9500円、住民税24万7000円)。

 

 2021年分の確定申告期間はシステムトラブルのあおりを受けた延長戦に突入しているが、既に確定申告完了済みの方が多いと思う。しかし、2022年分の確定申告でも考え方は大きくは変わらないはずだ。

 実際の税金についての相談は、読者の皆様から税理士や税務署にお問い合わせ願いたい。

 次回記事では、寄付金控除、ふるさと納税、住宅ローン控除を紹介し、組み合わせたシミュレーション例を紹介する予定である。

 

*1:国税庁,「[税のしくみ] 税の種類と分類」,https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page02.htm,(参照2022-03-20)

不動産価格と住宅ローン:年収500万円で4000万円のローンは首都圏ではありふれているのかもしれない

今回の内容

 今月に入ってから住宅ローンによって生活のクオリティが下がったとの匿名記事が投稿されていた。概ね批判的な意見が多いようだが、首都圏の現状からするとよく見る光景だろう。本記事は以下の読者に向けている。

 

  1. 今後の住宅購入を考えている
  2. 現在住宅ローンを返済している
  3. 首都圏の最近の住宅市場の事情を知りたい

 

 本記事は、下記の匿名記事について考えたことを記載している。年収500万円で4000万円のローンを期間30年で組んだという方の記事である。結果的に住居費以外で使える自由資金が少なくなり、QOLが下がっているという。

 

anond.hatelabo.jp

 

本記事では、不動産市況、住宅ローン、労働者の平均年収から上記のローンの組み方が無謀なのかを考えるとともに、QOLを上げるための対応方法を検討する。

 返済比率を検討すると厳しいが、首都圏の不動産価格高値どまりの現状だとやむを得ないローンの組み方ではないかと筆者は感じている。

 対策は下記のようなものが考えられる。

  •  購入時に中古物件等で取得価格を落とす
  •  返済期間を延ばすことで支出面からキャッシュフローを改善する
  •  共働きで収入面からキャッシュフローを改善する
  •  不動産市況のインフレに合わせて、売り抜ける

 

以下、不動産市況、住宅ローンを検討し、対策を挙げてみる。

 

 

 

目次

 

トピック:首都圏の不動産価格

新築、中古マンション価格推移

 首都圏のマンション価格は、新築/中古共にアベノミクス以降値上がりを続けている。平方メートルあたりの単価でみると、2013年以降では新築でおよそ1.7倍、中古でも1.5倍の値上がりである。*1

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不動産経済研究所データ:不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」より

 

 恐ろしいことに、東京23区内では2021年に5000万円以下で販売されているマンション物件(もちろん数十平方メートルの区分所有である)の割合は20%程度まで下がっているようだ。*2

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新築マンション価格帯別の発売戸数割合推移(23区):スムログより

 

 夫婦や子供1人のみの世帯でよく見られる60平方メートル程の物件で計算する。

 2021年11月の新築平均価格だと、千葉県以外は70万円×60平方メートル=4200万円であり、2LDKであっても4000万円を上回る。

 晴海選手村の影響と思われる値下がりがあっても、2LDK23区では120万円×60平方メートル=7200万円となっている。*3

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㎡単価の推移(1都3県):スムログより

 

 日経新聞には下記のような記事も出ていた。全国平均価格は年収の8倍、都内の平均価格は年収の13倍、23区に限ると19倍とのことである。

 

www.nikkei.com

 

www.nikkei.com

 

 新築4000万円というマンションは、全体の水準から見ると堅実ということになる。築10年以上の中古マンションであれば、成約データ上はもう少しお安い物件もあるようである。*4

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中古マンション成約単価・件数の推移(1都3県):不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」より

 

新築、中古戸建価格推移

 戸建ての価格についても値上がり傾向である。しかし、マンション価格に比べるとまだマイルドという見方ができる。

 それでも2021年データによると、首都圏新築戸建ての平均価格は4000万円を超える。築20年の中古戸建でも首都圏平均価格は3500万円を上回る。(東京都はなぜか価格逆転)

  新築 中古(築20年)
首都圏 4000万円 3700万円
東京 5000万円 6000万円
神奈川 4300万円 3800万円
埼玉 3500万円 2700万円
千葉 3500万円 2500万円

 

www.kantei.ne.jp

 

www.kantei.ne.jp

 

 下記はレインズに掲載されていた中古戸建の取引価格推移である。*5

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季報 Market Watch サマリーレポート 2021年7~9月期

 

 

トピック:住宅ローン

毎年の返済比率(返済負担率)

 住宅ローンの借り入れの際には融資の審査がある。年収と1年間あたりの返済額の比率によって借り入れ可能額が決まる。借入金利と年収、期間によって変動するため、単純に借入額に対する年収倍率を確認するのではなく、返済比率を見るのが望ましい。

 一般的に言われるところだと、年収400万円未満の場合は年収の30%、400万円以上の場合は35%までを金融機関は貸出すとされている。*6

 しかしながら、こちらの比率は貸してくれる金額であって、無理なく返せる比率ではない。金融機関は年収の20%-25%以内に返済比率を留めるように推奨している。(管理費と修繕費が発生するマンションについては20%-25%でも住居費負担がかなり重たいという考え方はある。)

 

 仮に年収500万円、全期間固定金利1.3%(フラット35)35年の返済としてシミュレーションする。

 返済負担率35%は4919万円。25%は3510万円。20%は2810万円の借り入れとなる。

 

プロの推奨する返済比率

返済比率15%

 不動産の専門家は年収の15%程度に抑えるのが無理のない計画だとしている。総務省統計局の全国消費実態調査では、可処分所得(税金などを差し引いた手取り額)に占める住宅ローンの割合の平均は16.9%としている。*7

 (中山氏はYouTubeにて不動産についての解説動画を多数アップロードしている。)

 

 年収500万円で手取りを400万円と見ると、無理のない借入額は2100万円となる。この水準は厳しい。先ほど述べた通り、首都圏ではこの水準の新築物件はほぼ存在しない。1都3県で最も安いとされる千葉県の築古中古マンションでさえ60平方メートルでこの水準に収まるかは怪しい。

 

年齢を加味した借入額:(退職年齢ー現在の年齢)×年収×20%

 不動産の管理についての記事を多数掲載している、はるぶー氏という方が退職までの年齢を加味した適正借入額を提唱しているそうである。*8算式は下記の通り。

 (退職年齢ー現在の年齢)×年収×20%

 

 冒頭の匿名記事の場合だと、(60 - 26)×500×20%=3400万円が適正借入額となる。

 将来的の早い時期の昇給+それが継続することを見込む場合はもう少し上限は上がる。平均すると600万円の収入が続く場合(60 - 26)×600×20%=4080万円が適正借入額となる。

 しかしながら、匿名記事の筆者は退職までではなく30年の借入期間としているため、借入期間と控えめに資産した平均収入での計算が妥当となるだろう。

 30年間×550×20%=3300万円が無理のない借り入れとなるのではないだろうか。

 

各比率での借入額

 年収と借入額ごとの返済負担率を掲載する。首都圏の住宅価格だと、年収800万円、借入金利0.7%の条件でようやく4000万円の借入を15%強の返済負担率で可能となる。それでも東京23区内だと買える物件は無いかもしれない。

www.sumai-info.com

 

 全期間固定のフラット35と、市中銀行の10年固定を想定して試算する。

www.flat35.com

 

 

35年返済、金利1.3%の場合(フラット35)

  300万円 400万円 500万円 600万円 700万円 800万円
15% 1260万円 1680万円 2100万円 2520万円 2950万円 3370万円
20% 1680万円 2240万円 2810万円 3370万円 3930万円 4490万円
25% 2100万円 2810万円 3510万円 4210万円 4910万円 5620万円
30% 2520万円 3370万円 4210万円 5050万円 5900万円 6740万円
35%   3930万円 4910万円 5900万円 6880万円 7870万円

 

35年返済、金利0.7%の場合(銀行の当初10年固定,11年目以降の金利に要注意)

  300万円 400万円 500万円 600万円 700万円 800万円
15% 1390万円 1860万円 2320万円 2790万円 3250万円 3720万円
20% 1860万円 2480万円 3100万円 3720万円 4340万円 4960万円
25% 2320万円 3100万円 3870万円 4650万円 5430万円 6200万円
30% 2790万円 3720万円 4650万円 5580万円 6510万円 7440万円
35%   4340万円 5430万円 6510万円 7600万円 8680万円

 

 年収500万円の方に向けては下記のようなブログ記事もあった。年収500万円というのは20代給与所得者の中では上位であるそうだ。

 それでも不動産価格が一方的に上がっているため、厳しいローンとなるのだろう。

www.americakabu.com

 

 各社の住宅ローンシミュレーターが提案している借入額がアグレッシブすぎるのではないかという問題提起。

wangantower.com

 

住宅ローン控除

 購入後一定の期間、特定の金額まで住宅ローン控除として税額控除を受けることができる。

 0.7%未満の金利で借り入れている場合、借入額が控除対象額未満の場合は返済期間を長めにとることに優位性がある。優遇対象は家の種類や入居年(2023年以前、24-25年、26年以降)で異なる。

 ご自身の最適なローンの組み方については確認、計算してみてほしい。

finance.recruit.co.jp

 

トピック:住宅ローンとQOL向上の方法

 以下、今回の場合のQOLを上げる=フリーキャッシュフローを増やす方法について簡単に考えてみる。住宅やローン以外のその他状況はそれぞれ異なるため、適切な行動もそれぞれ異なる。

売却:都心と郊外

 駅の近く(徒歩7分以内)、大規模(数百戸から千戸以上)、タワー系のマンションは市場価値が高いとされている。

 購入してから3年が経過しているとのことなので、住宅ローン残高は縮小していると見込まれる。上記条件に当てはまる場合、不動産市況のインフレに伴い、残債割れしないだけではなく、住宅売却で一定額の利益が出る可能性がある。

 より狭い物件や、より郊外の物件への買いなおし、または賃貸暮らしを許容できる場合は売却が手段となる。

 しかしながらマンション市況は高値追いのため、安い物件に住み替えられずお金の面では楽にならない可能性がある。中古戸建の場合、市場で高く評価されない=残債割れ=住替え不可で逃げられないということにならないように注意が必要である。

 なお、住宅の設備仕様が落ちる場合は結局QOLが下がるため、その点も十二分に検討が必要である。

 

返済継続:キャッシュフローの調整

支出の削減

 30年の住宅ローン(残27年)を、別の銀行で30年または35年で借り換えることができるかを相談するという手がある。期間を長くすることで、単年当たりのキャッシュフローを改善する。高い金利で借りていた場合は、より安い金利に借り換えることで総支払額を減らせる可能性もある。

 

難点は下記の通り。

  • 借り換え手数料も手間もかかるため、金融機関との調整や吟味が必要
  • 住宅ローン控除の条件が不利になる(1%->0.7%控除、控除対象価格減少の可能性)
  • 金利が上昇傾向(米国の金利と国内固定金利が上がり始めている、2022年1月時点では変動金利0.3-0.4%もあるが2023年の日銀総裁任期後の短期金利が読めない)

 変動金利で住宅ローン金利を組んでいる場合は5年ルール(5年ごとに毎月の支払額は同じ)と125%ルール(金利見直し時前回比125%以内の返済額となる)の対象であることは確認したほうがよい。

 最悪の場合、金利上昇に耐えられない場合は売却の必要に迫られる。

 

収入の増加

 夫婦共働きで働くことで、家計全体ではキャッシュフローは改善する。(個人で自由に使えるお金が増えるかは分からない。)

 また、26歳という比較的若いうちにローン返済を始めているため、他の支出を抑え続ければ匿名記事筆者の昇給に従って、ローン返済比率は徐々に低下していくと思われる。

 

注意点:固定資産税と修繕費の値上げ

 重々承知だと思うが、築5年を超えると、マンションは固定資産税の減税がなくなる。(固定資産税+都市計画税の年税額が2倍近くなる。)

 また、修繕積立金が当初設定は必要額の半分以下に設定されているマンションが多い。18000円の徴収が必要なのに、毎月8000円しか徴収してないなどよく見られる。その場合は数年後に年12万円の修繕費値上げがあると覚悟しておく必要がある。

www.sumu-log.com

 

まとめ

 以上、近年の首都圏の不動産事情と住宅ローンについて簡単にまとめた。

  • 首都圏の新築マンション価格は値上がり傾向(年収の13-19倍)
  • 新築マンションは23区は7000万円、それ以外は4000万円以上は必要
  • 中古マンションや中古戸建は3600万円程度から買える
  • 住宅ローンは返済比率で判断
  • 控除は縮小
  • 売却する場合、数年の保持により売却益が出る可能性もある
  • 返済期間の調整、共働きでキャッシュフローに余裕を持たせるのが吉

 ざっくりと見てきたが、平均所得の伸びがほぼないのに対して、不動産価格の値上がりが早すぎるのが、匿名記事のようなローンの組み方をせざるを得ない理由だと考える。

 個人の意見だが不動産の転売ヤ―が利益を出し、実需層が損をするという構図は望ましくないだろうと感じる(実際は投資用市場の方が不動産は安いらしい)。

 実需層向けに新築住宅価格を抑え込めないか、高品質な中古住宅を安価な価格で供給できないかというのは政策として考えてほしい。

 

*1:不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」,2021-12-10,「首都圏中古マンション市場動向(21年11月)|不調の兆候を見せ始めた!?」,https://1manken.hatenablog.com/entry/2021/12/10/chuuko-mansion-sijou-monthly-report ,(参照2022-01-09)

*2:スムログ,2021-12-30,マン点ニュース 21年12月(定期観測/市場/ほか),https://www.sumu-log.com/archives/37377/ ,(参照2022-01-09)

*3:スムログ,2021-12-30,マン点ニュース 21年12月(定期観測/市場/ほか),https://www.sumu-log.com/archives/37377/ ,(参照2022-01-09)

*4:不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」,2021-12-10,「首都圏中古マンション市場動向(21年11月)|不調の兆候を見せ始めた!?」,https://1manken.hatenablog.com/entry/2021/12/10/chuuko-mansion-sijou-monthly-report ,(参照2022-01-09)

*5:公益社団 法人東日本不動産流通機構,2021-10-18,「季報 Market Watch サマリーレポート 2021年7~9月期」,http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_202107-09.pdf ,(参照2022-01-09)

*6:SUUMO,2017-11-01,「住宅ローンの返済比率(返済負担率)の目安は? 無理なく返せる額を計算」,https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/sumai_nyumon/money/jyutakuloan_hensaihiritsu/ ,(参照2022-01-09)

*7:中山聡著,田中和彦監修, (2021).『不動産のしくみがわかる本』 同文舘出版, P70

*8:konanタワリーマンブログ,2020-08-04,「世帯年収XXX万円でXXXX万円の物件を買うのはあり?なし?」,https://konantower.hatenablog.com/entry/2020/08/04/214932 ,(参照2022-01-09)